得する喜び、損する辛さ

不動産投資は、諸経費を考えた場合、売買の回数をできるだけ減らし、ひとつの物件を長く保有するというのが鉄則です。

不動産は、株式投資と比べて売買時の仲介手数料やさまざまな諸経費が必要だからです。
しかし、投資活動が長くなると、不動産をいったん売却したほうがいいというときもあるかと思います。
その場合、買った値段に対して数百万の赤字が出るようなときには、損を出してまで売りたくないと思うのが人情というもの。

こんなときこそ熟考が必要です。

とにかく損をしたくないと必要以上に思うのは、「人間は同額の利益から得る満足より、損失から受ける苦痛のほうが大きい」(ノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマン教授の言葉)からだそうです。
確かに、100万円の利益を得たときより、100万円を損失した方が打撃は大きそうですね。

リーマン・ショック後の世界金融恐慌では、日本の不動産市況も冷え込み、その会社の株価も見る見るうちに下がっていきました。
経営破綻の噂も市場に飛び交うようになったとき、その会社の株を売却し、大きな損を確定することができるかどうか。
長い間保有し、愛着もあればなおさらです。

ではどういう風に考えたら良いか。

「今の状況や事実を知ったうえでも、この物件に、この金額でもう一度投資するだろうか」
その結果、明らかに投資しないという判断が導き出されるならば、売却した方がいい結果をもたらすことができるのではないかと思います。

もちろん、損切できる体力がなければなりませんが。

人は当然、損をしたくない。でも売るべきかどうかを迷うときもあるでしょう。
そのとき「損を確定させたくなという気持ちが強いから売れないのではないか。現在の状況で新たに買う気があるか」ということを自問してください。

運が巡ってくるとき

「運が大切だといっても、十数人もの人間が、全員が全員儲かっているなんてことあるのか」
ある日、その不自然さに気がついたある社長は、保有している全物件を翌日からできるだけ早く売却しました。

結果、この社長の会社は不動産バブル崩壊の数ヶ月前に、全物件を売り抜けたのです。
能力のある者、ない者、運がある者、そうでない者、そういった能力や運のめぐり合わせを超えて、全員が儲かっている状態−――それが不動産バブルでした。
そしてこの不自然さにいち早く気がついた者だけば、不動産バブルの波を被らなくて済んだのです。

この社長に運があっただけとはいえません。
冷静に分析できる能力や決断力ともろもろの総合力があったからこそ、バブルの波を跳ね除け生き抜いたといえます。
積み重ねた努力が花開くのは、儲かっているときばかりではないのです。

投資家になるならば、やはり長い期間の成功が欲しいところ。
そのためにも、運というものを味方につけるべきです。

また不動産投資自体は、物件を探したり選別したり、契約や引き渡しまで一筋縄ではいかず、とてもエキサイティングなものです。
その後の管理業といえば、物件の管理や清掃、賃料滞納時の催促などの管理業務は、多種多様な不動産関連業種の中で、一番地味出細かい業務といえます。
不動産投資家になる前に、そんな業務に自分は向いているかどうかを見極めることも大切です。

投資で成功したからといって、二手、三手と次々に不動産投資に手を出すのは違います。
不動産投資の部分だけではなく、「物件の管理」が向いている人もいます。
良い物件に育てたり、入居者との良い関係を築けるかどうかも、運といえます。

儲かっているときだけが、運が巡ってきているわけではないということを念頭に置いて不動産投資に参入してください。

満室でも安心できない

ある東京近県の投資用一棟マンションの話です。

そのマンションはある不動産会社が数ヶ月前に旧オーナーから購入し、内外装をリフォームして個人投資家に転売しようとしているものでした。
駅からの距離、立地条件と悪くはないのですが、築年数が古く、各住戸の広さも一昔前の団地サイズでした。

とある会社が調査した結果「そのエリアは賃貸の供給過多エリア」であることがわかりました。
空室も多く、家賃も広さごとに上限価格が頭打ちになっている傾向がありました。

しかし、この調査を依頼した人物からの情報では、賃貸に関しては契約ベースで満室状態だというのです。
さらに周辺の成約の賃料は、調査対象のマンションの現況の賃料は、周辺相場よりも明らかに高い。にもかかわらず満室だというのです。

ところが、このマンションにはからくりがありました。
なんと売主が駅周辺の賃貸業者へ『家賃2ヶ月分のお礼をするから優先的に案内してくれ』と徹底的に営業をしたらしいのです。
これは、賃貸業者は借り手から1ヶ月分、大家から2ヶ月で3ヶ月分の家賃がもらえるということ。
荒っぽい手口です。
荒っぽいものの、満室にする、という意味ではお見事と言わざるを得ません。

しかし、周辺相場と比較して高い家賃で借りている人が、今後も長く住み続けるという保証はなし。
将来的には適正な賃料(利回り)に戻ることでしょう。

確かに、金融機関の融資を引き出すのにも満室という事実が有利に働くことは間違いありません。
しかし、それが無理をして作られた一時的なものであったならば、購入する投資家サイドからみたら、とても良い物件とはいえません。

「現在満室だから安心」する前に、いろいろと調査して総合的に判断すべきです。

どんな良い物件に見えても、即断できないケースがあるということです。